友が教えてくれること。
親友に「ここに絵を描いておくように」と
よく命令されました。
彼女はいつもコンパクトな手帳を持っていて、
そこに
日時の数字と
予定を書き込んだ文字だけが並んでいることに
なにかしらの違和感を感じていたのでしょう。
それは彼女の芸術性から生まれる
感覚だったのではないかと、
今振り返ると思います。
理系の学生の日常。
彼女も私も理系でした。授業はすべて理論と実験で埋め尽くされた世界で、
その中にどっぷり浸かった後の
休憩時間には
ひたすら冗談ばかりを言って
ケラケラと大笑いをして過ごしたことが
今となっては、いい思い出です。
彼女と私は研究者の道へ進みました。
彼女は今でも科学の分野で活躍し、
社会に貢献しています。
しかし、
実は彼女のピアノの腕前はかなりのもので、
幼い頃は音楽の世界で生きていく道も
真剣に視野に入っていたのです。
一方で私は
これといって取り柄もなく、
私がなぜ彼女の手帳に
絵を描く係になったのかは今でも不明です。
落書き係はこうやって始まる。
授業が始まる前、隣の席に座る彼女が言うのです。
「 Nori、ここにピアノの絵を描いて~。」
彼女にはお気に入りのペンがあって、
彼女の手帳にはそのお気に入りのペンだけが
記入を許されていました。
ですから、
当然、彼女の指定した
そのボールペンで絵を描くことになります。
確かに彼女のボールペンは描きやすく、
絵が上手に描けたのです。
「まぁ、描いてって言われて描けるんだから、
それでいいじゃん。」
そう笑う彼女の声が聞こえてきそうです。
いやはや、
友達というのは面白いものですね。