絵の探求と日々のあれこれ

骨から芸術へ (6) Memento mori (メメント・モリ)『死を想え』

    
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骨から芸術へ (6) Memento mori (メメント・モリ)『死を...

人体の骨格のつくり(鉛筆) by Nori



芸術におけるモチーフとしての『 骨 』の意味


 
前回は、

アンドレアス・ヴェサリウスの著書、
『ファブリカ』の

内容構成について書きました。
 



 

15世紀から16世紀にかけての
ヨーロッパでは、

医学の発展に伴う
純粋な科学としての解剖図
 

というものが存在した一方で、
 

頭蓋骨というものが

絵画の主題として
密接な影響を持つことになります。
 
 

思想を表す図像と言葉

 
17 世紀に勃興し
18 世紀に隆興をきわめた

『静物画』の分野において
その影響が見て取れます。
 

その時代の静物画には、

人間である限り
誰にも逃れることのできない死、
 

あるいは

はかない人生を生きるという
人間の運命
 

を表すためのモチーフとして
頭蓋骨が使われます。
 

頭蓋骨が放つメッセージ

 
頭蓋骨
というモチーフを通して

表現された思想を
 

象徴する言葉があります。
 

・Memento mori (メメント・モリ)『死を想え』

・Vanitas (ヴァニタス)『空虚』

・Danse macabre (ダンス・マカーブル)『死の舞踏』

・Transit (トランジ)『移ろいゆくもの』
 

これらの思想が
大きなテーマとなって、

芸術における絵画にも
頭蓋骨が配置されるようになりました。
 

なぜ絵にしなければならなかったのか。

 
ここで、

なぜそこまでして
死を想わなくてはならなかったのでしょうか。
 

そこには現代にも通じる
普遍的な人間像が浮かび上がってくるように感じます。
 

私達は皆、
自分の人生に限りがあることを
意識せずに毎日を過ごしています。
 

その、どこか現実から離れた
弛緩した精神の中では

本当の人生の意味を見出すことは
難しいのかもしれません。
 

華やかな生活が描かれた絵の中に配置された
骸骨は、

自己中心的なふるまいや傲慢さといったものを
戒めてくれる象徴的な存在です。
 

死生観を繰り返し自分に問い正すために

死と生というものに対峙する絵画を
家に飾ったのでしょう。
 
 

骨から芸術へ

 
アンドレアス・ヴェサリウスの
『ファブリカ』から始まって、

15世紀から16世紀における
 

科学と芸術の
大きな流れを

『骨から芸術へ』というテーマで
追ってみました。
 

これまでの内容を以下にまとめます。
 

 

■『骨から芸術へ』内容一覧

 
(1)『ファブリカ』の価値



 

(2)『ファブリカ』著者の人物像



 

(3)『ファブリカ』の時代



 

(4)『ファブリカ』の芸術性



 

(5)『ファブリカ』の内容構成



 

(6) Memento mori (メメント・モリ)『死を想え』



 

 

■『骨から芸術へ』参考資料一覧

 
『ファブリカ』をはじめとして

アンドレアス・ヴェサリウスの
伝記や著作、
 

その書誌学的研究が
熱心に行われています。
 

今回参考にさせて頂いた資料は
以下のとおりです。
 

◆阿久津 裕彦, 澤井 直, 坂井 建雄, ヴェサリウス『ファブリカ』の筋肉人図における人体表現の形態学的分析, 順天堂医学 58 巻 (2012) 2 号 p. 151-160

◆坂井 建雄, 解剖学書としてのヴェサリウスの『ファブリカ』と『エピトメー』, 日本医史学雑誌第43巻第4号, 423-455,(1997)

◆鈴木 秀子, アンドレアス・ヴェサリウス『人体の構造についての七つの書』(貴重書紹介), 明治大学図書館図書の譜-明治大学図書館紀要4号,311(90-118),2000
 
 





「骨から芸術へ」シリーズは以上で完結です。



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